貸倒損失の要件 〜国税庁 法人税基本通達こそ貸倒れのバイブル〜

続きの内容があるとは言ったけど、それぞれ独立しても読めるような内容になるはずだし・・・

わかったよ。じゃあ、始めるよ。

まずは大前提をおさらい。メメは会計と税務とどちらが偉いと思う？

そうだね。会計は会計基準や会計の理念に従って決算をすればいいし、税務は税法に従って申告納付すれば問題ない。

例えばさ、減価償却の耐用年数は、会計では何年使えるか考えて年数を決めるってことになってるけど、1つ1つ考えていたらかなり疲れちゃうよね。で、見回すと、国税庁が「耐用年数の適用等に関する取扱通達」ってのを出してて・・・

やっちゃえはちょっと横暴だけど・・・

ごめん、ごめん。
まあ、税務って会計からスタートして税務とズレている分を申告時に調整してというやり方だから、ズレていると調整が必要になるし、またそこでミスをするというリスクも潜んでいるので、無理はしすぎないってことで。

じゃあ、本日の本題に戻って、どういう状態になったら「貸倒れ」って言える？

それはそうだね。聞き方が悪かったかも。
えーと、税法は基本的に貸倒を許さない。もっと言うと、税法は貸倒を費用として認めたくないのだよ。

じゃあ例で確認していこう。
例えば、売上100、仕入80だと、利益は？

じゃあ、売上が全額貸し倒れたら？

20の利益があればそこに税率を掛けて税金を取れるけど、80の損失だと税金が取れなくなっちゃうでしょ。税金を徴収する側の気持ちからすると、それを安易に認めるわけにはいかないよね。

そこで、どういう状態になったら貸倒れってことで渋々認めてあげるかの範囲を厳格に決めているわけ。

貸倒損失については、法人税の基本通達に載っていて、通達の中でも1,2を争う有名箇所だと思う。貸倒の話をしていて「きゅーのろくのいち」って出てきたら、通達の要件のことを言ってるのだねってなる。

法人の有する金銭債権ってことは

(1)は、会社がもうダメだ状態になってしまい、会社更生法のもと、これから立ち直るために色々調整していくから、申し訳ないけど債権を切り捨てさせてねってことだね

大体ね。でもこっちはもう本当に清算して終了。

(3)は、債権者集会の決定。こちらもここまでと一緒だけど、関係者内で決める分、もうちょっと細かく書かれている

そだね。これは民法での債権の切り捨ての考え方だから、悩んだら弁護士に確認するのがいいと思う。

9-6-1は特に経理要件が求められていない。該当する事実があれば、税務上は債権切捨てとなるよ。

忘れないでよ！

しょうがないなー。経理で損失処理しなくても、税務は落とすのが正しいよ。事実の発生した日の属する事業年度とまで言ってるから、経理で落とさなかったら、税務調整して。それもしそびれて申告まで終わっちゃったら、修正申告で取り戻すってことになるかな。

9-6-2の要件は、全額が回収できないことが明らかになったとき

むしろ逆かな。明らかって結構難しいよ。債務者の資産状況、支払能力等って言ってるから、債務超過の状態が何期か続いて、今後も収益が見込めない状況でないといけないとか・・・結構待たされるよ。どちらかと言うと9-6-2が9-6-1の補完だね。

9-6-2は、債権者側のあきらめを税法側が認めてあげるよという趣旨だから、経理での損失処理＝損金経理が求められている

全額が回収できないことが明らかになったときだから一部っていうのは対象外かな。

9-6-3は、国税庁のタックスアンサーの文章で見ていこう

まあまあ、そう言わずに。原文にあたることは、できるだけ端折らない方がいいから。

ここまでいちいち債権の範囲を見てきたのは、この9-6-3のためと言って過言ではない。

要件で継続取引の停止を求めるから、継続取引に当たらないものを除外しているんだね。

うん。取引を停止しても、弁済があればまたそこから1年になるよ。音沙汰なしの状態が1年続いたらってイメージ。

あんまり気軽に使われても困るから、支払いを督促してもというのが付け足されているね。

『損金経理できる』というのは、会計側で費用処理や損失処理すると税務上もそのままOKだよってこと

知らない

基本通達に書いてあるから！ 悪法も法なり？

9-6-3ってわたしは実際に使ったことないんだよね。9-6-2より早く使えそうな気もするけど、そう言う場面に出くわしたことがなくて。

不良債権をいつまでも放置しているのは良くないけど

でも、だからって、安易に貸倒れにしようっていうのも、それはそれで罪だと思うんだよね

税法では原則利益供与は認められないので、9-6-1〜3の要件に当たらないなら、寄付金課税や交際費課税にならないかも確認してほしい