最近またインボイス制度について聞かれるようになっちゃったー。
かの方も予てより所望していらしたのに、凛香が放置してたんだよ。
詳細に正確に知りたければ他を当たってもらうことにして、今日は基礎の基礎をまとめてみるよ。営業の人とか、「インボイス制度、対策大丈夫ですか」と聞かれて「?」の人向けに。
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インボイス制度とは
消費税法の中で規定されている
「Invoice」って日本語だと「請求書」のことだよね。 そう思ってしまうと、理解しづらくなってしまうかもしれない。
もちろん全然意味が違うとかそういうわけではなく、請求書の話をしているにはしている。
でもこの制度を理解するには、「請求書」にとらわれすぎず、何なら一旦忘れてしまってもよいくらい。
消費税法に書かれていて、消費税が幾らになるのかに影響を与える。
でも消費税法に「インボイス制度」とは書かれていない
消費税法に書かれていてというのは厳密に言うと正確ではなく、消費税法に「インボイス制度」という文字は出てこない。
国税庁のページでもさんざんインボイス制度と言っているので、そういう名称っぽいけれど、それは通称で、消費税法上は「適格請求書等保存方式」と書かれている。
でも、かなり初めの段階からインボイス制度って言っていたと思う。
制定してみて「ヤバい、言いにくい、浸透しなそう」となったのか、それとも「インボイス制度ってナンパすぎじゃね、もっと格調高い名前のが法律っぽくね」と思って漢字名をつけたのか。
マイナンバーカードもマイナマイナ言ってるから、愛称をつけるのが流行ってるのかな。
インボイス制度もマイナも愛着は全く感じていないけど。
正式名称は適格請求書等保存方式
さて、「適格請求書等保存方式」。この複雑な名前を覚える必要はないものの、ただのインボイスじゃなくて、適格な=必要な条件を満たしているインボイスのことを言っているということがわかると、話が見えてくる。
満たす必要のある要件は以下のとおり。
- 適格請求者発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
さて、この中で問題になるのはどこでしょう?
①は売る側の名前、②は日付、③は何を買ったのか(売る側からすれば売ったのか)、④は金額、⑤は消費税額、⑥は買う側の名前。一見、どれも簡単そうだよね。
そう。普通に請求書に書かれる内容。インボイス制度は消費税10%導入の際に軽減税率8%のものをきちんと区別してねってことで話が出てきて、そこに論点はないこともないけど・・・
まあ、わかってしまえばきちんと分けるだけだよね。
ということは、①がただの請求書発行事業者ではなく、適格請求書発行事業者ってとこがミソなのか。
適格請求書発行事業者になるには
適格請求書発行事業者でない事業者が発行した請求書はただの請求書で、適格請求書等、つまりインボイス制度における「インボイス」ではない。
適格な請求書を発行するには適格請求書発行事業者にならなくてはならない。
申請して、税務署の審査を受ける
適格請求書発行事業者になるかならないかは自由。義務ではない。
個人でも法人でもなりたい人は申請書を記入して税務署に出す。もちろんe-TAXがおススメ!(注:わたしが勧めているわけではありません。)
登録番号がもらえる
審査に無事通過し、登録されると、申請者は登録番号が通知される。国税庁の公式サイトにも登録番号が公表される。
番号を調べる以外に見ることはないけれど、
このサイト。「インボイス」を発行するときにはこの番号を書くことになっているというわけ。
案外、簡単?
そうは問屋が卸さない。そもそも申請に条件があるの。
簿記3級とか?
メメ、わざと言っているよね。そうじゃなくて・・・
ただし課税事業者でないと申請できない
消費税の世界には2つの事業者がいる。課税事業者と免税事業者。税金を納める人(個人 or 法人)と税金を免除されている人(個人 or 法人)。
基本的に消費税は集めた事業者の懐に入るのではなく、預かって国や地方公共団体に納める。
でも、課税売上が1,000万円以下だと消費税の納付を免除される。
ちょっと見まわしてほしい。あの店、1000万円も売り上げなさそうだけど、レシートに消費税ってあるけど。そんなお店がいくらでもあることに気が付く。
そういうお店は、消費税を預かっても免税事業者なので最終的に納付はしていない。別に悪いことをしているわけではないけれど、免税事業者の懐におさまる。インボイス制度は、結果としてそこにちょっとしたメスが入ったことになる。
インボイスを発行できないことのデメリット
せっかく免税なのになんで課税事業者になる必要があるの? 適格請求書等なんて小難しいインボイスが発行できなくたって請求書とか領収書とか発行していいんでしょ?
そのとおり。請求書は発行できるし、商売を続けることに問題はない。
でも、これだけ話題になっているには理由があって、適格請求書等を保存しないと仕入税額控除の適用を受けることができない。
事業者(法人・個人事業主)は売上で預かった消費税を全額納める必要はなくて、仕入に掛かった消費税を仕入税額控除としてマイナスすることができる。
例えば、売り上げ2000万円、売り上げに掛かる消費税200万円、仕入れ1500万円、仕入れにかかる消費税150万円だったら、納める消費税は50万円という感じ。(細かい条件は考慮から除く。)
でも、免税事業者は消費税を納めていないのだから、仕入税額控除は関係ないよね。
うん。でもそういう次元ではなくて、自分の発行した請求書=自分の売上なのだから、自分の仕入にはなりえなくて、仕入税額控除はそもそも全く関係しない。
免税事業者のお客さんの仕入税額控除に関係するってことだね。
売り上げ2000万円、売り上げに掛かる消費税200万円、仕入れ1500万円、仕入れにかかる消費税150万円だけど、そのうち免税事業者からの仕入が500万円だとすると・・・
50万円は仕入税額控除できなくなる。納める消費税が100万円になってしまう。
できる会社員なら これからはインボイス(適格請求書)で!
仕入税額控除できるインボイスをもらおう!
普段は営業担当で売り上げがメインでも仕入れにも携わることがほとんど。
自分で支払伝票を切ったり、これ支払っておいてってアシスタントに頼んでいる場合も、とにかく自分が請求書を受け取る立場なら、2023年10月からは、もらう請求書はインボイス制度に従った請求書。
そうしないと仕入税額控除で損しちゃうかもしれないからね。
同じ5万5千円を払ったときに、適格請求書なら5,000円が控除できるから5万円の費用だけど、要件を満たしていないといくら消費税5,000円って書いてあっても5万5千円全額が費用になってしまう。
まずは、適格請求書発行者の登録番号を書いてもらう必要があることを覚えておこう。
で、適格請求書発行者じゃないですって言われてしまったら・・・諦めるしかないけれど、値引きしてもらえないかなとか別の業者にしようかなとかそういう選択が出てくる。
発行する請求書もちゃんとしたインボイス
自分の会社の納める消費税とは直接関係ないけれど、お取引先にお出しする請求書ももちろんインボイス制度に従った「インボイス」で。
相手が課税事業者なら絶対に「インボイス」を欲しがっている。
課税事業者じゃなくても、特に使い分ける必要もないので「インボイス」を発行しておけば間違えない。
免税事業者の苦悩
さきほどさりげなく書いた
適格請求書発行者じゃないですって言われてしまったら・・・諦めるしかないけれど、値引きしてもらえないかなとか別の業者にしようかなとかそういう選択が出てくる。
これは裏を返すと、免税事業者は商売を切られてしまうかもしれないというピンチに立たされていることになる。
免税事業者のままでは適格請求書発行事業者にはなれない。
今まで税込み550万円の売上があって、税金を納めてなかったのだけど、今後は50万円も納付?
そんなことはなくて仕入税額控除があるので、例えば税込み330万円の仕入れがあれば30万円が控除になるから、納付は20万円。それでも充分に痛い。
「インボイス出してくれないなら消費税分値引きしてよ。イヤなら仕入先変えるわ」
え、そんなの困る!
これがインボイス制度に反対している人たちの主張。
もちろん、インボイス制度に従ったインボイスを発行する環境を整えること自体も苦労だけど、本当の本当に反対している人のは免税事業者と、免税事業者を守ろうとしている人たちになる。
インボイス制度は、免税事業者にとって、増税 or 仕事を失う(かもしれない)
今まで税金分得してたのだから仕方ない?
そうはいっても細々とやってる事業者はつらいよね。でも一般の個人相手のお仕事や免税事業者同士ならインボイスを欲しがられないから、選択を迫られているのは大きな会社を相手に仕事をしている免税事業者かなあ。
まとめ
インボイス制度は、適格請求書等保存様式のことで、仕入税額控除の対象となる消費税が幾らなのかを税率ごとに明確に示し、またその書類を保存することが本来の位置づけ。
この制度が話題になっているのは
- 自分のお客様のために適格請求書発行事業者の登録をしなくてはならない
- 適格請求書を発行するためのシステムなどの準備をしなくてはいけない
- 仕入税額控除を受けるために、相手に適格請求書を発行してもらわないといけない
- 免税事業者が適格請求書発行事業者になるには、まずは課税事業者にならないといけない
です